窓の外のクモの巣に、トンボが引っ掛かっていた。トンボはまだ生きていた。脚がじたばた動いている。すぐそばにいたクモが、トンボの羽に糸を巻きつけて、縛っていく。不要な部分だったのか、巣の一箇所をプチンと切った。そうしたら、トンボが見事に宙吊りになった。脚が動いていない。死んだのかもしれない。今度はトンボの背中のあたりにやってきて、クモが動かなくなった。トンボの脚が動いた。まだ生きていた。ひょっとしたら、クモは背中のどこかに噛みついているのかもしれない。脚がときおり動く。そうか、羽を糸で縛ったのも、体を内側へと縛っていったのも、トンボの背中の肉を浮かび上がらせて、食いやすくするためだったのかもしれない。脚が動かなくなった。次は首のあたりにかじりついている。やはり背中は食われていた。えぐれていた。窓一枚、挟んでいる。食われていく最中、トンボはこっちを見ていたかもしれない。

Keisuke Suzuki