名前が分からないけど、一羽の鳥が、駅の待合室から出られなくなっていた。待合室はガラスに囲まれていて、出ようとしても出れずに、何度もガラスにぶつかっていた。切ない声をあげながら。
掴まえて外に出してあげたい。どうするか考えた結果、持っていた布地のエコバッグに両手を入れて、これで鳥を優しく包み込むように掴まえることにした。
鳥が怖がらないように、ゆっくり静かに近づく。鳥は声をあげてガラスにぶつかりながら隅っこに逃げて行く。鳥の目の前まで来てしゃがみ込んで、エコバッグで覆った両手を差し出す。無理に捕まえようとしないで、手元に近づいてくるまで動かずに待った。小さな目で、チラチラと僕の顔を見るのが分かった。ガラスが、鳥の息で小さく曇っているのが見えた。怖がらなくていいよと、小さく言った。
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