ゴミ

今の生活になる前は、朝の散歩が日課だった。山へと続く一本の坂道。朝はご褒美が多い。オニヤンマの羽化が見れたり、つがいなのか毎朝だいたい同じ場所にカラスが二羽いたり、昨晩風呂に入っている時に鳴き声が聞こえたキツネがいたり「ああ!お前かー!」といった感じで、毎朝同じ道を歩くと見えてくるものがあって、それがとても楽しかった。


ついでにゴミ拾いもするか。自分が歩く道は綺麗な方がいいし。そう思って、ビニール袋とトングを持って家を出るようになった。落ちてる、落ちてる。無限に落ちてる。毎朝拾っても、次から次へと出てくる。昨日なかった場所に急にあったりする。軽いものは風で飛んできたりするのだろう。人通りがほとんどない道だけど、気にして歩くと、ゴミは落ちているものだ。


冬の間は散歩はおやすみ。そして雪が溶けて春がやってくると、また散歩をはじめる。そうすると、またゴミがしこたま復活しているのだ。あれだけ拾って綺麗になった道に、またゴミが現れる。キリがない。それでも拾う。オニヤンマが羽化する場所は、細い側溝に水が流れ、草が生えている。そこにはゴミが溜まりやすい。だから綺麗にしてあげる。人間がゴミダメ(街)の中で生活しているのは知ったこっちゃない。だから僕は街のゴミ拾いはしない。他の生き物たちに迷惑をかけたくない。ゴミにばかり意識がいくと、散歩のついでに始めたゴミ拾いが、いつの間にかゴミ拾いのついでに散歩をしている自分に気づき、あ、いかんいかん、となることもしばしばある。ゴミはもともとゴミではなかった。必要な何かだった。しかし人間の手を離れた瞬間ゴミになる。落ちているゴミを見ると、なんだか可哀想に思えてくる。


ゴミ拾いをしていると、いろんなことを考える。ゴミを出すのは人間だけだ。他の生き物たちはゴミを出さない。他の生き物たちは、ちゃんと地球に還る生き方をしている。人間だけが地球に還らないものを生み出し、自分自身も還らなくなりつつある。この星にとって不自然な生き物になりつつあるように思う。


ゴミを減らすためにはどうしたらいいだろうか。答えは簡単だ。