お店のこれからについて

人と人が向かい合って話しをすればすぐに済むことを、敢えて文字に起こすというのは、労力と時間を要するし、野暮な側面もある。それでも書くのは、遠く離れた場所にいる大切な人達に、この思いを伝えるためだ。同じ町に住んでいるのにここにやって来ない人たちには、本来伝えることは何一つない。


あまり多くを語りたくはないが、野暮を承知で長々と書くことにする。


お店は今、非常に厳しい状況です。毎月首の皮一枚といった状況です。言うまでもなく、ここ数年で夜の飲食店を取り巻く環境は激変しました。今年に入って状況が多少好転するのではないかと様子を見てきたのですが、希望を持てるものはほとんどありませんでした。だんだんと、町が憎くなり、人が憎くなり、お酒に罪はないのにお酒が憎くなり、この仕事を選んだ自分が憎くなり、憎しみの根本は自分であることにいきつき、日々がすり減っていくのを窓の外を眺めながら感じています。


状況は厳しくても、お店のあり方を蔑ろにはしたくありません。本質的な美しさや豊かさを育めるようなお店でありたいのです。「理想だけではやっていけない」と他人に向かって言い放つのは、最後まで理想を貫くことができなかった者の言い訳です。


お店のあり方を蔑めることなく存続させていくためには、端的に言って、日常的に来てくれるいつもの人たちに協力していただかなければいけません。具体的にはcharge料を見直します。いつもお世話になっているのに、さらに多くを求めなければいけないことがただただ心苦しいです。「多くを払ったのに」と残念な気持ちにさせないために、よりいいお店にしていきます。


そして、もう一つ。これは文章で説明するとかなり長くなってしまうので、言いたいことを汲み取っていただきたいです。


僕には、「ここには豊かさの本質がある」と思える場所が一つだけあります。その場所に憧れ、うちのお店もあんな場所にしたい思いながら、お店を営んでいます。その場所には自然の恵みがあり、人の善意で必要最小限に成立している奇跡的な場所だと僕は思っています。狂った資本主義に侵されていない、最後のオアシスかもしれません。


一般的な飲食店のあり方としては異例だと思いますが、今後、うちのお店は寄付を募ります。「場所」として維持するための費用に当てさせていただきます。


「維持するため」と言いながら、辞めることも申し上げます。来年の12月でうちのお店は10年を迎えます。飲食業界は閉業率が非常に高く、10年続くお店は1%だと言われています。つまり、100軒あったら99軒が閉業してしまいます。僕はこのお店をこの場所で10年やりたい。それが今の目標です。10年やれたら、この場所のこのお店は、閉めます。そのあとの事については、ここではまだお伝えできません。


「寄付に頼らず自分の力で10年やる事に意味があるんじゃないか」と寄付に対して苦言を呈す方もいらっしゃると思います。そのこともよく分かるのですが、先に述べた、僕にとっての憧れの場所、豊かさの本質がある場所が、寄付によって維持されている場所なのです。


寄付がある場所、寄付で維持される場所。そこから何が生まれるのか。この期に及んで僕は見てみたいのです。寄付によって、ここに集う人たちや僕自身に、そしてこの「場所」に何が生まれるのか、僕は見てみたい。


長くてあと一年半で閉めてしまうこのお店に寄付をするというのは可笑しな話かもしれない。例えば、一年に一度しか訪れることができない場所に寄付をするというのは可笑しなことかもしれない。クラウドファウンディングのように何かお返しがあるわけでもないのにお金を使うのは可笑しなことかもしれない。


僕に言えることは、「寄付によって何が生まれるか、それを一緒に味わいましょう」くらいのことしか言えません。


寄付について連絡を取りたいという方は、僕のメールアドレスsavannaparty@gmail.comにメールをくださるか、僕と連絡が取れる方法であれば何でも構いません。連絡をください。


以上、長い文章をお読みいただきありがとうございました。