お気に入りの散歩道に、水路がある。幅は3メートルくらい。水の流れはそこそこ速い。その水路に、蛇がいた。泳いでいるのかと思って呑気に見ていたら、様子がおかしい。水路の壁にへばりつこうともがいている。でも流されてしまう。誤って水路に落ちてしまったのかもしれない。この水路には、たまに小動物の死骸がある。落ちたら這い上がれないのだろう。
蛇が向こうの壁際を流されていく。遠くてどうすることもできない。流されていくのを、小走りでついていく。蛇はなんとか壁にへばりついて登ろうとするけれど、流れが早いし、垂直に近い壁だし、取ってつけるようなとっかかりもない。頑張るけれど、流されてしまう。どうにかしてあげたい。
水路には反対側へ行くための橋があることを思い出す。橋といっても、建設現場で使う足場をかけただけのものだ。それを渡ったことは一度もない。橋があるところまで走って先回りする。途中で腕の長さくらいある杉の枝を拾う。これで蛇を引っ掛けてすくいとってあげよう。
橋が見えてきた。渡るとギシギシといって小刻みに揺れた。反対側へ出た。蛇が流されてくるのを待った。きた。まだ登ろうと必死にもがいている。僕の目の前までやってきた。杉の枝を水に刺す。蛇の長い体の真ん中あたりに、うまく枝が引っかかった。流れが早くて枝が持っていかれそうだ。蛇が抜けてしまわないように慎重に、それでいて勢いよく水からすくいあげた。うまくいった。蛇は落ち葉の上にあがった。近寄って顔を見ると、不思議そうな顔をしていた。逃げる元気もなかったのか、その場で動かないでいた。「良かったな、もう落ちるなよ」と言って、橋を渡って、もとの道に戻った。
0コメント