銭湯。お父さんが身体を洗っているすぐそばに、3歳くらいの男の子がいる。お父さんが男の子に、ここを捻るとシャワーが出るんだよと、やって見せて教えてあげる。男の子が真似をする。シャワーからお湯が出て、男の子の顔にかかる。男の子は声をあげて大喜び。夢中になってシャワーを出しはじめた。お父さんは、これで少し時間が稼げると思ったのか、自分の身体を洗うのに専念し始めた。
男の子はお父さんの後ろで、何度もシャワーを出しては、自分の顔や頭にお湯がかかるのを声をあげて喜んでいた。僕は少し離れたところから、お湯に浸かって、その姿を微笑ましく見ていた。すると、なんだか不思議なことに、シャワーそのものが、意思を持った生き物みたいに見えてきたのだ。シャワーが男の子の遊び相手になって、面倒をみているように見える。シャワーも楽しそう。喜んでいる。男の子も、周りの小さな空間も、喜んでいる。
僕の隣から、小さく笑い声が聞こえてきた。見ると、お爺さんがお湯に浸かっていた。お爺さんも、男の子を見ているようだった。
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