ゴールドラインを上り始めて二時間ほど経ったころ、小腹が空いてきたので、カーブの手前のちょっと広くなったスペースで休憩をとった。ザックからおにぎりを一つ取り出して食べていると、シャーーーっという細い音が上から聞こえた。「あ、自転車が来るな」と思ったのとほぼ同時、僕の目の前を一台のママチャリが猛スピードで下っていった。若そうな男が、町にいるような服装で、僕のことなど一切見ずに、引きつった笑顔で、躊躇なく突っ走っていった。僕はおにぎりを片手に、ポカンと、、、小さくなっていく彼の後ろ姿を見ていた。わずか数秒の出来事だった。
Keisuke Suzuki
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