時さえ忘れて
- さっきいつもの蕎麦屋で昼飯を食べていたらお客さんが入ってきて、それは男性で、見た瞬間「変わってんな」って分かった。彼は僕の目の前のテーブルについて、僕とは面と向かい合う形になったんだけど、顔を見ると、あれ、どこかで会った気がする。絶対にどこかで会ってる。うちのお店か。いや、どこだろう。全然思い出せない。けれど絶対にどこかで会ってる。現世で会ってないなら前世か来世で必ず会ってる。思い出せない。チラッチラッと何度も目が合う。くっそー、思い出せねえ。君、誰だっけ。
- Tくん、おはよう。俺は今日は、はるかちゃんのところに歩いてパンを買いに行く。どうやら天気も最高らしいからね。Tくんはさ、俺がいつも水汲みしてるところまで、電車と徒歩で行ってみるといいんじゃないかな。いい運動になるよ。で、帰りは駅の待合室で、ムツゴロウさんの人間教育という本を読んでくるといいよ。今日言うの忘れたけど、つまりムツゴロウさんが言うには、手を動かせと。手を動かすことが大事なんだと言ってる。やっぱり手を動かすことは大事なんだよ。Tくんはもうすでに手を動かしてイメージを形にしている（もしくは形をイメージしてる）と思うけど、これからもずっと手を動かし続けると良いと思うね。俺は歩き続けるよ。で、それはそうと、今夜はNで軽く飲みながら飯でも食うってのはどうよ？返事ははるかちゃんに送っておいて。着いたら聞くから。
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